旧近鉄伊賀線(仮)美旗新田トンネル



三重県 伊賀神戸駅−旧美旗新田間

後半戦

  

 上下2連の架道橋(下は水路だけど)の左手から
伸びていた道。。。それはやはり、廃線跡の築堤上
に登る道でした。

 そしてこの廃線跡、道が復活しておるのです!

 って、純粋にトンネルだけを目指すのであれば、
ここから出発するのが妥当だと思われます。
 思いの外、廃線跡に密着取材をしております。
 振り返れば、右下方向に今来た道があります。

 そして。。。まっすぐ。。。廃線跡が続いておるので
すが、やはり猛烈な籔まみれに。。。
 これをぶちぬいてやってくるのはほぼ不可能と
思われます。
 左右の籔が今にも軌道面を屠ろうと触手を伸ばし
ていますが、どうもこの辺は人の手がそれなりに
入っているようで、何とか持ち堪えている感じ
です。
 蜘蛛の巣だけに気をつけて進みます。
 おお。。。

 緑の海が左手に広がります。結構な広さです。
 一気に周囲が明るくなりました。
 いつしか緑の海は右手にも広がり、行く手には
周囲の樹木とは質の異なる木々が聳えます。
 なんだありゃ?
 細長い樹木達の脇をかすめて道は辛うじて
伸びています。
 
 (カーソルオン)

 左手を見ると、その木々異質さが分かります。
 明らかに植林ぽい。しかもここだけ?
 なんで???
 その植林たちからすぐ、雰囲気が独特の暗い
感じになってきます。
 なんとなく、そろそろ”それ”を期待できる雰囲気
となって参りました。
 緑が急速に衰え、はっきりとした石積み法面に
しっかり守られた軌道跡。
 直線で、結構先まで見通せます。

 うーん、いい廃景だ。。。
 ぬおおお。。。

 ぬかるみ結構きつい。。。
 石積みで守られなくなった法面に乗りかかって
よろよろ前に進みます。
 長年の侵食で、横断する水路が露出する状態に。
 水は流れており、今でもその役割を担っています。
 軌道面はもはやただの平地ですが。。。
 そして。。。そして遂に。。。

 出た!!!

 意外と明るい竹林の中にそれは存在しました!
 ぬかるんだ路面を避け、竹林に沿って接近しま
す。
 あああ。。。

 この映像、ネットで見たことある。。。
 やはりこうなっていたのか。。。

 あまりにも無残なそのお姿。。。
 しかし、坑口えらい高いなあ。
 もう少し接近。

 !!やはり煉瓦造り!!!
 逆光で見にくいですが、確かにオール煉瓦造り
と思われます。

 来た甲斐あった!!!
 笠石に煉瓦1層、迫石の巻厚は4層になってい
ます。アーチ内部もしっかり煉瓦。
 まごう事なき総煉瓦造り!
 胸壁にはイギリス積みが採用されておるよう
です。
 その胸壁に設置される配線設備跡。
 廃棄物上から振り返り撮影。
 竹林に挟まれ、比較的明るい軌道跡。水にまみれ
つつも現役当時の様子を残そうと頑張る姿が
何とも愛おしい。。。
 さて、内部ですが。。。
 。。。見えます。。。閉塞地点が。。。
 
 やはり事前情報通り、閉塞しているようです。
 それにしても、アーチは完全な煉瓦造り。見事
です。
 。。。文言無用。。。いい景色だ。。。
 トンネル内部。。。入る前に相当の懸念をしていた
沼化。。。足を踏み入れてみると意外と土被りは
なく、足場はしっかりしていました。
 
 で、閉塞地点間近。コンクリで完全封鎖です。
 振り返り。
 。。。ゴミがなければなあ。。。
 
 アーチ側壁はイギリス積み、アーチ天井部は
長手積みとなっています。
 オール煉瓦使用の定番ですね。
 天井にはご家族でお住まいのこうもりさんの
お姿が。
 お邪魔しております。

 
 完全閉塞ですが、気になる穴が1つ。。。排水
管が頭半分の状態で突き刺さっています。
 向こう側が見えたりしなかなあ?
 うむむ。。。

 残念。完全に内部で埋っています。
 風もないので、貫通はないですねえ。
 現状最深部より撮影。
 これだけの延長を残しつつ片側は埋められた、
この名も延長も知れぬ隧道に悲哀を感じます。

 何か情報お持ちの方いらっしゃいませんか?
 気になるので裏側に回ってみました。
 ここが裏側。。。って、こっちが表ですよねえ。。。

 右手の築堤のような高台は、旧線跡ではありま
せん。旧線は写真中央付近を横にぶったぎって
いました。
 そして、左手の田圃にかつての「美旗新田駅」
があったようです。
 ですので、仮名称を美旗新田トンネルとした次第
であります。
 トンネルの所在です。
 築堤のような高台は水路でした。
 設備が見えます。
 おお。。。こいつは珍しい。。。

 初めて見ました。これは「円筒(形)分水」という
やつではないでしょうか。
 サイフォンの原理で円筒中央から水を湧出させ、
溢れた水を穴が仕分けて各用水路に配分する、
という代物だったと思いますが。。。
 動力源を有さず自然の力のみで分配させるシス
テムがすごい!
 見事に分水されてます。
 現役で活躍中ですねえ。
 用水路は、築堤の上を一直線に走っています。
 この築堤の下に横からあの廃トンネルが刺さって
いるのです。。。
 1654年、藤堂藩にて施工された用水路のようで
す。歴史あります。
 通称、「新田用水」だそうです。
 築堤が道に分断されているのに、生きていると
思われる疎水。これもサイフォンの原理を利用して
道の下をくぐっているのでしょうか。
 すごい。
 築堤に増設されたような石垣。その上には
常夜燈が。
 歴史文化を十二分に感じさせてもらえますねえ。

 最後はトンネルからかなり脱線しましたが、
非常に有意義な探索となりました。